I don't think so !

じゃあ、お前はどう考えるのだ!

海王丸と富山湾の曇り空

佐川アルマジロが守ったものは―官僚組織が国家である

「証人喚問の意味がない」、小池さんがそれを言っちゃお終いだ

昨日、参議院衆議院の予算院会で佐川前国税庁長官の証人喚問が行われた。森友問題の突破口となる期待もあったが、佐川アルマジロの硬い甲羅に国会議員ははじき返された恰好だ。論客で知られる小池共産党書記局長も「これじゃ証人喚問の意味がまったくありません」、「証人喚問が成立しない」と嘆くしかなかった。舌鋒鋭く相手に切り込めるのは小池議員ぐらいだろうから、そんな泣き言を小池議員は発してはならない。時間も限られ、検察のような強力な捜査権もないのだから、佐川アルマジロの不誠実と論理矛盾を国民に分かりやすく整理し、少しでも多くの国民に政府と官僚組織に対する不信感を抱かせることができれば良いのだと思う。         

アルマジロは外敵に襲われると手や足を引っ込め、硬い甲羅を丸めて身を守る。佐川アルマジロの甲羅はもちろん鉄壁な官僚組織だろうが、守ったのは、いろいろな見方があるが、私には安倍総理でも昭恵夫人でもなく、官僚自身だった気がする。

先日の新聞報道によると天下りが有名無実となっており、財務官僚が金融機関に天下ると年収ベースで5000万円を超える収入を手にするそうだ。天下る前はトップの55歳事務次官で年収約2500万円。国会議員の平均年収が約2200万円だから、これを凌ぐ収入が高級官僚には保障され、天下り後は信じられないぐらいの額の収入を得ている。

天下り先や高額な収入も含めた全体が官僚組織であり、官僚が一丸となって組織防衛に走るのは、至極当然のことだ。

野党議員vs官僚組織

国会議員は年収以外に文書交通費や政党交付金などが2000万円程度支給される。しかし政党交付金は政党の事情により国会議員にわたる金額は大きく上下する。地方出身の議員は最低でも自宅、地方事務所、議員会館内の事務所、議員宿舎の4か所の居場所を維持しなければならない。議員会館にある事務所の冷蔵庫、テレビなどの購入費やNHKの受信料なども自己負担だ。地方事務所を維持するためには冷蔵庫やテレビ、コピー機などの備品以外に家賃や遊説用の車なども必要だ。秘書は3人まで認められているだけだから、それ以外の留守番や電話番などのスタッフの人件費も必要だ。こうした諸経費はすべて領収書が必要だし、領収書は公開される。だから資産家の世襲議員でもなく、派閥のボスによる資金援助もなく、企業などの大口の金づるもいない野党の国会議員は、思いのほか貧乏だ。経費節減で新聞の購読すらやめた議員もいれば、地元に帰って選挙活動をするための交通費のやりくりに苦しんでいる議員もいる。地元の後援会や支援組織も国会議員の収入に期待を寄せて大きな口を開けて待っている。何とも因果な商売だ。こうした野党の国会議員自民党公明党の政府与党や巨大な官僚組織に立ち向かっていく姿はドンキホーテさながら滑稽でもあるし悲惨でもある。

このような窮状を知っている官僚が、野党議員を見下すのも当然のことだ。しかし見下すと言っても、我々一般人とはレベルが異なる。ネットの言説空間に溢れる下品な言葉を使う官僚はいないし、慇懃無礼な態度だと言われる愚かな官僚もいない。

なぜか。それは官僚組織があまりにも巨大で競争が激しいからだ。言葉遣いや態度などのつまらないところで突かれるようでは出世できないのだ。

 佐川氏の証人喚問後に開催された立憲民主党の森友・加計学園問題PT(2018.3.27)

会計検査院財務省国交省の官僚を招聘、衆議院第一議員会館

f:id:nakama1564:20180328153140j:plain

 官僚組織維持の基本原則は問題を起こさないことと合理的根拠 

佐川氏がつまずいたのは公文書の書換え前の文書を残し、書き換えたことがばれたことだ。それによって前代未聞と言われる公文書改ざん事件を引き起こしたことだ。通常であれば優秀なキャリア官僚は、たとえ文書を書き換えたとしても、書き換える前の文書は絶対に残さない。内部告発されないだけの部下との関係性もきちんと維持するだろう。恐らく森友案件が政治案件、刑事事件案件に発展してしまったため何らかの齟齬が生じて朝日新聞に情報が漏れてしまったのだ。優秀な官僚によるあまりにもお粗末な顛末が森友問題の実相を物語っているのだろう。

朝日新聞のスクープの最大の功績は政治家の関与を暗示したことではなく、官僚組織の鉄壁の合理的根拠を突き崩したことだ。だからヘナヘナと佐川氏は辞任し、財務省は公文書の改ざんを認めたのだ。官僚組織を含めた税金を使う側の権力全体に対するメディアのチェック機能の重要性を国民に再認識させたことが朝日新聞の最大の功績だろう。これは大切なことだ。

官僚組織は競争が激しいため公文書には決定に至るまでの合理的根拠を記載する必要がある。「誰がそんな決定をしたのだ」、「この決定には何ら正当な根拠がないではないか」と簡単に足を引っ張られるようでは出世は覚束ない。合理的根拠とは「真実」である必要ない。というか合理的根拠が「真実」を形成するのだ。自分たちの世界で筋道が通っていればいいのだ。

鏡文は1枚、決裁者は資料のコピーを保有せず―決裁文書に押印した官僚も連座責任

会社では押印欄のある決裁資料の先頭ページを頭紙(あたまがみ)と言ったりするが官僚の世界では鏡文(かがみぶん)と言うらしい。鏡文をそのままにして、中身を差し替えたのが今回の改ざん事件だ。

鏡文は1ページしかないとはいえ、とても重要な資料だ。起草者や提案者及び決裁者、決済日などが分かるからだ。

会社では決裁資料を後日改定することがそれなりの頻度で発生する。数字や固有名詞の単純な間違いや決裁後に購入物件の価格改定が発生したといった場合である。その場合、先頭の鏡文を含めて改定する。改定理由を取締役会など決裁者が出席する正式な会議で説明したり、上司の指示のもとに担当者が個別に決裁者を回って説明し、頭を下げ、承認を得て、再度押印してもらう。つまり決裁資料の改定は決裁者全員の承認のもとに行う。決裁者は、役員、局長、部長、次長、課長といったそれなりの立場にある人たちだから、決裁者に無断で担当者が勝手に資料の差替えや書換えをすることは本来起こりえないし、怖くてそんなことはやらない。ということは、今回の決裁資料の書換えは押印した決裁者の了承のもとに行われたのではないか。もし決裁者の知らないところで行われたと主張するのであれば、決裁者全員が管理者として不適格ということになる。いずれにせよ今回の事件では決裁者全員の降格や刑事訴追といった責任は免れない。そのための決裁者なのだ。

加えて書き換えられた公文書のコピーである。会社であれば決裁者全員が決裁資料のコピーを保有している。財務省はコピーを決裁者は保管していないというが、まったく信じられない話だ。この辺りも突っ込みどころだろう。官僚組織のおける仕事の進め方や手順にフォーカスすると違った側面が見えてくるかもしれない。

安倍総理昭恵夫人も官僚組織の駒に過ぎない

 森友案件の公文書も刑事事件にならなければ改定されることもなく封印されて終わったはずだ。後から別の官僚が足を引っ張ってやろうと勇んで読んだとしても、総理夫人の名前を見た途端、恐らく見なかったことにして封印され続けただろう。文書の公開請求があっても改ざんせず黒塗りにすれば良いだけだ。

官僚組織の最大の規範は合理的根拠だ。高級官僚になればなるほど、目指すは年収5000万円以上の収入なのだ。あるいは豪華な役員室や理事室、運転手付きの専用車なのだ。そのために組織内において合理的根拠をどうやって構築するのか、ときには必要であれば政治家の駒も使う、ただそれだけだ。政治家絡みの案件であれば政治家の名前を使うのは当然だ。

安倍総理昭恵夫人との関与をいくら問いただしても、それを否定するのは、今後とも官僚組織としてはその駒を使う必要があるからだ。であれば安倍総理昭恵夫人との関与以外のところで合理的根拠を崩すしかない。改ざん後の文書が8億円値引きの合理的根拠の説明になっているか、ということだ。たとえばボーリング調査による価格算定の根拠だ。

公文書管理の新たなルールづくり

いずれにせよ小池議員が言っていた通り、これで終わらせてはならない。かといって政治家や昭恵夫人の関与を証明しようとしても極めて困難だ。できるのは「徹底的に原因究明する」といった安倍総理のウソ、すなわち原因究明に後ろ向きな総理や政府与党の態度を国民に明らかにすることだろう。

加えて早急に公文書管理の新たな法案をつくるべきだ。自衛隊日報問題や森友問題のように「文書は破棄しました」などとは言わせない法案だ。秘密保護法の一角を突き崩すか、その範囲を厳しく制限する法案だ。

今後とも黒塗り資料は出てくるだろうし、すべてがリアルタイムに公開される必要もないだろう。しかし、それでも情報開示の必要性や重要性を多くの国民が感じている。秘密保護法を強行した自民、公明の政府与党も以前にようにはいかないだろう。

国会議員が官僚を縛ることができるのは国政調査権でもない。法律なのだ。官僚に見下される政治家の唯一の対抗手段だ。