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海王丸と富山湾の曇り空

3.11報道に見る原発政策見直しの流れ

今年の3.11報道でも当然のことながら福島原発事故の処理の様子が取り上げられていたが、明らかに今までとは違う流れになってきた。調査データや行政文書の改ざんを見せつけられると、テレビ局や原発推進の論陣をはってきた評論家とて「原発の方が安い」とする政府の資料を信じて、そのまま放送したりコメントしたりするわけにもいかないだろう。いったんタガが外れると政府が先送りしたかった不都合な真実が次々と明らかになる。

事故処理費用の総額が50兆円から70兆円とテレビで語られ始めた

未だに政府は原発事故の処理費用については22兆円との試算しか公表していない。しかし、昨年3月に日本を代表する民間シンクタンク(社)日本経済研究センター(東京)は福島原発事故の処理費用が50兆円から70兆円に膨らむ可能性があるとして、「国民負担が大幅増の恐れがあり、国の原子力政策の見直しが必要だ」と提言しているのだ。この50兆円から70兆円という金額がようやくテレビでも語られ始めた。

福島原発の溶け落ちた燃料デブリの映像も盛んに放送されたが、あるコメンテータが指摘していた通り7年たってようやく溶け落ちたデブリの一部の写真撮影に成功しただけで、実態の把握にはほど遠いのが実状だ。

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テレビで放送された燃料デブリと思われる映像

さらにはデブリの取り出し方や取り出したデブリの処理方法はまったくの未解決である。未解決であるから政府はこれを除外して22兆円と言っているわけだが、実際には天文学的な金額になるのは必至だ。50兆円から70兆円という数字が意味するところだ。

加えて既存原発廃炉費用の負担が重くのしかかる。廃炉しようにも原子炉など使用済み核燃料以外の膨大な量の放射性廃棄物の処理方法や捨て場所がまったく決まっていないことも、最近、報道されている。電力各社は国策でやってきたのだから政府がなんとかしてくれること(つまり税金の投入)を期待しているようだ。原発の運転を延長させることで問題を先送りする計画だったのだろうが、福島原発事故でそれもままならず、原発の抱える問題が噴出しつつあるのだ。

政府も電力会社も盛んに再生可能エネルギーにすると電気代が上がると言っているが、原発の処理費用に伴う国民負担はその比ではない可能性が極めて大きい。「国の原子力政策の見直しが必要」とはそういうことだ。

TOSHIBAという会社の不思議

今回の福島原発の報道で目立ったのが外観に変化のあった3号機だ。

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福島原発3号機 核燃料取り出し用カバーと内部映像(出典:東京電力

違和感を覚えたのは内部映像のTOSHIBAのロゴである。原発安全神話の一翼を担い、自ら建設した原発が事故を起こして放射能をまき散らしたメーカーが、最も目立つ位置にロゴを大きく掲げている様子が全国放送された。私はこの映像を見て目を疑ったが、これは放射能被害を受けた住民や大幅に給与カットやリストラされた東芝の従業員、その他大勢の国民の神経を逆なでする映像ではないだろうか。

確かに3号機は原子炉から発電機、付属設備にいたるまで東芝製だ。だから責任は東芝にもあるとする懺悔の気持ちを込めた意思表示ならまだ理解できる。しかしそれはあり得ない。なぜなら東芝原発事業の失敗で死に体になっているため1円たりとも責任を負うことはできない。それどころか事故処理で生き残るしかないのかもしれない。普通の神経であれば、何らかの事情でロゴを入れる必要があるとしても、目立たぬよう隅に小さく入れるのではないだろうか。

原発推進者たちも再生可能エネルギーが必要だと言い始めた

少し前まで原発はベースロード電源として必要だと主張していた評論家や研究者たちの言動も変化してきた。「私たちも再生可能エネルギーの拡大を目指して努力している」「問題はありつつも再生可能エネルギーは絶対必要だ」と主張するようになった。極力、原発には触れないようにしているのだ。

政治家の変わり身は早く、以前から自民党公明党の与党議員たちはそう主張しているし、積極的な再生可能エネルギーの推進者のような顔をしている。

いまやテレビで原発が必要だと主張しているのは石坂浩二ぐらいしかいない(電気事業連合会のCM)。その意味で石坂浩二は潔いのかもしれない。

ベースロード電源としての原発の旗印を下ろさずに、裏では賛成しておきながら、もしくは反対せずに、表では再生可能エネルギー推進者のような顔をするのは卑怯としか言いようがない。なぜなら今までもそうであったからだ。単に原発推進の言い方を変えた方便に過ぎない。原発をベースロード電源と位置づけている限り多額の税金が原発に流れ続け、幾ばくかの税金が再生可能エネルギーに流れる構造は変わらないのだ。

世界の再生可能エネルギーの動向が放送されるようになった

福島原発以降、欧州など再生可能エネルギーにシフトした国は多い。ドイツのメルケル首相が福島原発事故を見て「日本が制御できないものをドイツが制御できるはずがない」と言って再生可能エネルギーに大きく舵を切った。それに対しては「ドイツはフランスから安い原発電源を買っている」とか「ロシアの天然ガスを簡単に買える」と言った論調が出回っている。原発をやめたのは間違いだと主張したいのだろう。しかしドイツは電力の70%を原発に依存しているフランスに対して電力の輸出国である。石炭火力発電が40%近くあるとはいえ、再生可能エネルギーの比率を33%と徐々に増やしている。

www.renewable-ei.org

イギリスでは大規模な洋上風力発電所が稼働していることも放送されていた。福島原発事故を契機に電力政策を見直した国々の成果が徐々に軌道に乗り始めている。そのため世界の大きな潮流がテレビでも報じられるようになり、国民もそれを知りつつあるのだ。

一方、日本はどうだろうか。昨年になって、ようやく政府は1兆円投じて失敗した「もんじゅ」の廃炉を決定したものの、電力会社は送電線の接続拒否により再生可能エネルギーの進展にブレーキをかけ、政府は未だに「原発の方が安い」と主張している。

政府のこうした姿勢が日本を世界の潮流から乗り遅れさせているだけでなく、新しい分野に果敢に挑戦する気概や精神すら削いでいるのではないだろうか。

世界の再生可能エネルギーの紹介は、こうした日本の姿に一石を投じるものだ。